漁港標識(机上調査編)

出かけた先・立ち寄り先に漁港標識があれば、できるだけ写真を撮るようにしていた。
が、手元にあるそのような写真は数えられるほど。
現地でしっかり探すわけではないが、見当たらないことも多い。漁港全てに設置されているんだろうか?

そんな疑問が湧いたら調べないと気が済まない。
水産庁、国交省国土数値情報、都道府県の農林水産部、市町村の水産課、等々のウェブサイトを巡って漁港のリストを作り、Googleストリートビューで1港ごとに漁港標識が設置されているか目視確認してみた。

漁港標識って何よ?こんなのよ。
法定標識だと思っていたのだが、漁港漁場協会が標準化を図ってはいるが任意のものらしい。

水産庁の資料によれば、2018年4月1日現在の国内漁港は2,823件あるという。
1件につき所在確認に10分かけると約470時間必要。1日3時間の作業とすると157日、つまり5ヶ月以上かかる。途中でやる気をなくしてしまう可能性が高いので、品質は低下しても構わないからスピード優先に切り替え、1件につき5分以上かけないことを心に、調査着手。

しかし調べていくうちに、いくつかの漁港には「分区」が設けられていて、その分区ごとに漁港標識がある(はず)ことがわかった。最終的に3,285件。平日4時間・休日12時間の作業をひたすらに繰り返して、それでも2ヶ月かかった。災害復興工事中の漁港は標識が一時的に撤去されている可能性があるので設置有無の判定を保留している。それを除いた各都道府県別設置率は下表のとおり。
存在を明確に確認できなかった漁港は「要現調」に分類しているので、設置率は上振れする可能性が高いが、ざっくり言って1000件の漁港に設置されていて、1000件の港には設置されておらず、1000件の漁港にはストビューカーが入っていないということがわかった。

都道府県や市町村によって設置状況には大きな差があって、ほぼ完備の北海道は別格としても、東北各県と日本海側は比較的設置率が高い。東京都・大阪府・滋賀県のゼロはなんとなくわかるが香川県の設置率の低さは特筆すべきレベルである。また、徳島県と沖縄県は独自デザインの標識が多いことが意外だった。

漁港には第1種から第4種まであって、さらに第3種の一部は特定第3種という名で区別されているので、その種別ごとの設置状況を集計してみた。
ここから読み取れるのは、第1種より第2種、第2種より第3種のほうが、つまり利用範囲が全国レベルに近づくにつれ設置率が高くなる。当然といえば当然なのかも知れない。その一方、特定第3種(水産業の振興上特に重要な第3種漁港)は港頭地区の面積が広く建築密度も高いため、漁港標識がどこに設置されているか探すのに一苦労であった。

さらに、漁港標識設置状況に応じてアイコンを変えてGoogleマイマップにマッピングしてみた。青い旗が設置されている漁港、黄緑の本が要現調、緑の?は設置されていない可能性が高い漁港、マゼンタは復興工事中である。
江戸時代から大きく変わっていない(集落や漁業形態)地域には漁港標識が設置されていない、という仮説を持ってみたが、真実はどうなんだろう?

疑問が湧いたら調べないわけにはいかないか。設置有無の現調を含めて。

一般人立入禁止の福岡県・沖ノ島高度なトレッキング技術が求められる知床岬松前町教育委員会に相談が必要な渡島大島等上陸が非常に難しい漁港は断念するとしても、1日あたり5件を巡る前提で650日必要。今後、統合により漁港名は変わりうるが新規に開港する漁港は殆どないと思うので、漁港巡りに人生を捧げれば3~4年で達成できるプロジェクトである。

現在も今後も同好の士がいるとは思えないが、漁港標識設置有無を机上調査するだけでも結構楽しい。その楽しみを奪うのは野暮なので、今回行った調査のマッピング結果は非公開にしておこう。


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