寺坂橋(埼玉県本庄市)

2025年5月4日訪問 [Google Maps]    [地理院地図]
利根川水系元小山川に架かる市道橋。
1889(明治22)年4月完成、橋長7.5mの単径間石造アーチ橋。

輪石は一重、壁石は布積みの練積み。ただし下流側の壁石は崩落して復旧したのだろう、部分的に玉石が積まれコンクリートで固められている。なお、翼壁も布積みだ。

起拱石と要石の間に配された輪石は10個。右岸側はコンクリートの護岸で固められているので拱環石の状態が見えないが同じだと思う。この10個の輪石のうち、起拱石寄りの4個は五角天端になって(五角形に切り出され壁石の高さに合わせて)いる。

五角天端自体は擁壁工事で昔から適用されてきたが、石造アーチ橋の輪石に適用する発想はなかなかできるものではないように思う。1884年完成の王子橋で類似構造を見ることができ、もしかすると王子橋に関与した人物が寺坂橋を設計したかも知れない。

輪石や壁石の見える部分は面取りされているのか風化したのか。拱環はしっかり詰まっている。

石造アーチ橋架設以前は「大橋」という名の土橋だったようだ。参考資料1の「明治十年 本荘駅地誌書上帳」を転記する。

土橋 長四間半巾八尺駅ノ中央ヨリ亥方字寺阪四町拾三間ニアリ 同郡山王堂村ヘ通路元小山川中流ニ架ス 大橋ト言フ

かつて中山道本庄宿から寺坂橋を通って山王堂、対岸の八斗島(やったじま)に舟で渡って伊勢崎までつながる「伊勢崎道」があり、地域の幹線道路だった。明治になっても伊勢崎道は幹線道路であり続け、県道本庄伊勢崎線に指定された。

親柱が4本並んでいるように見えるが、うち3本は束柱を移設したものらしい。見比べてみたが、どれが束柱だったのか判別できなかった。寺坂橋は現役道路橋としては県内最古とのこと。

この写真の背景に写り込んでいるうなぎふじ井とアメイジンググレイス本庄の運営会社である五州園、いずれも111年前に発行された参考資料2に記載されている。

国登録有形文化財(建造物)、2020年土木学会選奨土木遺産

    参考資料

  1. 本庄市史料 第6巻(1966年5月/本庄市教育委員会)
  2. 埼玉県本庄町名細地図(1914年12月/刀水社)
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