(2022年7月15日、2006年5月公開の記事に部分追記)
小学生の頃に何度かハチ北高原へスキーに行っているので、おそらく関宮ループも通過しているのだろうが、あいにく記憶がない。かと言って国道9号はトラック街道でもあり走っていて面白くないので、山陰方面のツーリングでここを通行することは稀である。
他にも通りたい道はあるのだが、一度は行っておかねば。
そして、ようやく今回の訪問となった。
「関宮ループ」は認知されている名称らしい。
現地を訪問すると、のの字の下に「関宮ループ 急カーブ R=50」の標識がある。
関宮ループ付近の橋梁は下表のとおり。標高が低いほうから順に並べ、桃色の背景はのの字を構成する橋だ。
橋梁名称 | 完成年月 | 橋長 | 橋種型式等 |
---|---|---|---|
4.8m | |||
八木谷小橋 | 1964(S39) | 18m | 2007年~2011年に拡幅 |
蛇渕橋 | 1966(S41) | 137m | 2008年~2011年に拡幅 |
矢井原橋 | 1966(S41) | PC3径間有ヒンジラーメン箱桁橋(ドゥルックバンド)→RC固定アーチ橋(2006年度に施工された補強工事で変更) |
となっており、全体の供用開始(葛畑・大野峠ルートから但馬トンネルルートへの切り替え)は1968(昭和43)年3月であった。
のの字の中央を突破するように細道が山へ向かって延びているが、これは国道9号の旧道ではなく、旧々道だ。国道9号旧道は、現在の県道87号養父小代線~県道269号福岡出合線・大野峠のルートであった。1885(明治18)年に近代国道が制定されて以後の関宮~福岡(但馬トンネルをはさんで東西の集落)間の国道経路を下図に示す。
緑線:1885(明治18)年~1899(明治32)年
青線:1899(明治32)年~1968(昭和43)年
赤線:1968(昭和43)年~
律令制に基づき制定された五畿七道、同一呼称の官道(駅路)が敷かれ、一定間隔で駅馬を常備する駅を置いたと言われる。
そのひとつである山陰道の経路は多くの人によって研究され、関宮の東7kmにある八木が養耆(やぎ)驛、香美町村岡区福岡の西数百m付近が山前(やまさき)驛、その間は関宮で分岐して八井谷峠ルートと大野峠ルートがあったと推定されている。
その流れを汲んでか他にまともな道がなかったのか、1885(明治18)年の国道制定時には八井谷峠ルートが選定され、関宮村村長・片岡寿左衛門の尽力で1899(明治32)年に大野峠ルートへ変更された。
つまり、昭和30年代に現在のルートを選定して着工したのは、経路を短縮し道路敷設に難が少ない地形・地質・土地利用であることに加え、「国道9号は古山陰道を継承する」意志が強く働いたんじゃないか。大野峠ルート以外に敷設するとなれば八井谷峠ルートを第一優先で検討するのは当然で、当時の技術をもってすれば可能と判断されループ橋が採用されたのだろう。
なお、但馬トンネルは国道9号最高地点(約400m)である。関宮から但馬トンネル(関宮側坑口)まで直線距離3.4kmの標高差は約200m。単純計算で勾配5.9%のところ、ループ橋にすることで25mの標高差を一気に稼いでいる。これだけの規模のループ橋は他には仙人大橋と音戸大橋ぐらいしかなかった。関宮ループを含め、いずれも国直轄工事であった。
のの字を過ぎてしばらく走ると但馬トンネルに入る。
関西エリア有数のスキーエリアだけあって、但馬トンネルの高さ制限を示す棒はスキーのストックである。
路線 | 国道9号 |
---|---|
所在地 | 兵庫県養父市関宮 |
回転度 | 300度 |
供用開始 | 1968(昭和43)年3月18日開通式 |
実走行日 | 2006-05-04 |
全景写真 | |
(2006年5月4日初訪)
国道9号を京都・関宮側からアプローチすると、登坂車線終了とともにこのような標識が出迎えてくれる。 拡大する ループ途中から眺める溝橋142.620・八木谷小橋・矢井原橋。このときの矢井原橋はまだドゥルックバンド構造のラーメン橋だった。 のの字の交差部(来た道をまたぐ橋)である蛇渕橋。2006年後半から数年間にわたって施工された補強工事・拡幅工事により、この橋名板はなくなった。代わって工事詳細が記された構造物銘板が取り付けられているが、文字が小さいので接近しないと判読不能。しかし、国道9号の交通量で銘板に接近・撮影するのは至難の業である。 のの字の外側であるが、旧々道及び八木谷川を越える橋、矢井原橋の橋名板。補強工事後に新しい橋名板へ付け替えられたようだが、ガードレールが被せられていて見ることはできない。 矢井原橋を但馬トンネル側から眺める。いつからこのデザインの警戒標識が置かれているか知らないが、先代デザインがあるなら是非見たい。 但馬トンネルの高さ制限バーはスキーのストックである。こんなとこに設置して意味ないじゃん?60m手前にもあるよ!(鳥取側は坑口の750m手前にある) (2022年5月5日再訪) 拡大する 関宮ループ交差部。水色の桁の橋は蛇渕橋。カーブの強調っぷりに圧倒される。 拡大する 矢井原橋の車両防護柵は鋼製からパラペットウォールに変わった。2005年9月に発生したタンクローリー転落事故の影響かも知れない。 拡大する 空から眺める関宮ループ。1200年以上続く国の幹線道路の進化だと考えると、なんだか熱くなるな。 |