(2004年8月26日初版記事公開 2023年3月21日大幅書換)
九州北部のライダー・ツーリングライダーには名高い「ナルシストの丘」は熊本県道1号熊本玉名線沿いにある。実山跨道橋はそのナルシストの丘の少し北側にあるループ橋だ。正確に言えば、実山跨道橋と耳取袴道橋でのの字を形成し、実山跨道橋が元来た道を跨いでいる。
この付近の熊本県道1号熊本玉名線は元々熊本県道114号天水熊本線であった。その天水町区間は複雑な経路かつ狭隘な道路で下有所(しもうそ)集落を通っていたことから同地内に2kmのバイパスが計画・建設され、1992(平成4)年暮れ頃に供用開始された。
住宅密集地を避けてみかん畑特有の傾斜地を縫うような線形となり、標高差を克服するためにループ橋が採用された。当時、九州内には既に20件ほどのループ橋・ループトンネルが存在したためか、大々的な報道はなかったようだ。
1993(平成5)年、天水熊本線は他の県道とともに熊本玉名線として統合再編されたが、天水町市街と下有所・上有所の間は狭隘・急勾配のままだ。
実山跨道橋の建設と並行してげんやま展望公園が整備された。実山跨道橋の直下から農道のような簡易舗装の道を進んで耳取袴道橋をくぐり、坂道を登っていくと公園に着く。夕陽が素晴らしいそうだ。また、天水町は俳優 笠智秀 の出身地(国道501号から県道1号が分岐するあたりの来照寺が生家)だそうで、初訪時には「おじいちゃんコンテスト」のポスターが掲示されていた。どんなおじいちゃんが出ていたのやら。
ところで、耳取袴道橋はおそらく誤字ではない。国土交通省の道路メンテナンス年報(平成28年度)にこの字で記されているだけでなく、現場の橋名板にもそう記されている。つまり、台帳に「耳取袴道橋」として登録されていると理解するのが自然だろう。「袴」には衣服の意味だけでなく土筆の節の部分や酒徳利の筒型器の意味があり、跨道橋とは違う袴道橋というジャンルの橋ということだろうか。「袴道橋」と名付けられた他の事例を探して分析しなければ。
路線 | 県道1号熊本玉名線 |
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所在地 | 熊本県玉名郡天水町小天 |
回転度 | 315度 |
完成時期 | 1991(平成3)年3月 |
実走行日 | 2004-08-26 |
全景写真 | |
拡大する (2004年8月26日撮影) 北側から坂道を登ってくると実山跨道橋が見える。げんやま展望公園はここを右折するのだが、初めて来たらループに釣られて回ってしまいそうだ。 拡大する (2004年8月26日撮影) ループ交差部を過ぎたあたりで眺める実山跨道橋。2004年当時はまだこのように半分見えたが、2022年は真冬でも木々が茂っていて見ることはできなかった。 拡大する (2022年12月31日撮影) 旧道(現・県道332号小天下硯川線)から眺める。天水町(玉水村)を代表する景観と言っていいだろう。 拡大する (2022年12月31日撮影) げんやま展望公園近くの駐車場からの眺め。実山跨道橋と耳取袴道橋の両方を眺められる。 拡大する (2022年12月31日撮影) 地上からはループしている様子が今イチなので、空撮の出番。作付面積が減少傾向にあるとは言え、まだまだみかんの里ということがよくわかる。 (2022年12月31日撮影) 実山跨道橋には投棄防止の柵が設けられている。 (2004年8月26日撮影) 実山跨道橋の橋名板。橋名板は橋名・かな名称・完成時期・またぐものまたは路線名が標示されることが多いが、橋名をふたつ掲げているのは県道統合整理を予期してのことだろうか。 (2022年12月31日撮影) 橋上から眺める耳取袴道橋。高欄があるから橋とわかるが、なければ気付かず通過するだろう。 (2022年12月31日撮影) 耳取袴道橋を見上げる。カルバートなので橋の感じがしないのは当然か。 (2022年12月31日撮影) 耳取袴道橋の橋名板。揮毫は最寄りの小学校・小天東小学校の児童によるものか?この堂々たる文字は小天中学校の生徒か?そして、普通は「跨道橋」の誤字だと思うよね。この字で台帳に登録されているのですよ。知らんけど。 「せんせー、こないだ提出したアレ、字ば間違えてしもうたかもー」 「しょんのなかけん、県庁に任せんば」 「なんねコレ?字ばちごうとる気が」 「ヨカヨカ、発注者指示に忠実に作るのがプロやけん」 「これはどげんしたと?ああー、字ば違うまま橋名板制作が進んでしもうたんか。しょんのなかけん、橋名もろとも変えてくれんね。台帳もよ。」 「そぎゃんえーころ加減なこつしてよかですか?」 「よかよか、だーれも気付かんけん」 といった展開だろうか?だとすれば、揮毫者名を表示しないのは大正解だ。 |