折橋ループ

島根県の西の端、吉賀町(旧柿木村)と津和野町を結ぶ島根県道226号柿木津和野停車場線は広狭混在する。とりわけ町境付近は1車線で、冬季は閉鎖、冬季以外でも土砂災害等で頻繁に通行止めになる。それを解消するかのようなバイパス路が緑資源幹線林道 波佐・阿武線 柿木・津和野区間(現在の路線名称は町道唐人屋線)である。その県道と緑資源幹線林道の分岐点がのの字を描いている。先述のとおり県道が険道であるため、殆どの車両が県道からループを描いて緑資源幹線林道経由で津和野方面へ向かっている。

地図で見ている限りループ途中に分岐があるうえに県道本線はループしていないので「のの字」認定ならずと思い込んでいたが、現場を見て考えを改めた。堂々ののの字である。ただ、この周辺に存在するのの字はいずれも途中に分岐がない完全無欠な物件なので、見劣りするのはやむを得ない。

「折橋(おればし)」はこの付近の小字名であり、本郷川に架かる県道の橋梁名でもある。緑資源幹線林道の橋梁は「新折橋(しんおれはし)」と名付けられているが、新が濁らないのは「橋は濁らないもの」という近代ルールに基づくものだろうか。

江戸時代に参勤交代ルートとして整備された津和野街道(廿日市街道とも)は、津和野の町から杉ヶ峠(すんがたお)・唐人屋を経て、ここ折橋で南進して柿木村中心部へつながっていた。1800年前後に描かれた伊能大図にも折橋の地名を確認することができる。その後に自動車通行可能な道路として現在の県道が整備されたようだが、如何せん1車線ではどうにもならぬ。やがて緑資源幹線林道が整備されることになり、津和野町笹山~柿木村折橋の区間は往時の津和野街道とほぼ同じ経路が採用された。折橋で県道と接続した当初は県道が直線の三叉路であったが、その後に緑資源幹線林道が県道バイパスになった実態を踏まえて交差点改良がなされたと見られ、その一環として折橋が架け替えられたようである。

路線県道226号柿木津和野停車場線/
緑資源幹線林道 波佐・阿武線 柿木・津和野区間(町道唐人屋線)
所在地島根県鹿足郡吉賀町柿木村福川
回転度320度
完成時期1979(昭和54)年
実走行日2020-09-21
全景写真
柿木村から津和野へ向かって走ると、赤い桁の橋が見えてくる。これが緑資源幹線林道の「新折橋」だ。
新折橋を桁下から眺める。道路がカーブしているので、内側の桁がそれに合わせるように曲がっている。
折橋全景拡大する
折橋全景。本郷川に架けられた県道の橋梁である。1997(平成9)年に架け替えられているが、先代の橋梁はどんな橋だったのだろうか。様々な情報源をあたってみたが関連資料は得られず。
県道交差点から新折橋を眺める拡大する
県道交差点から新折橋を眺める。県道ではなく緑資源幹線林道である(あった)ことを主張している。これ大事。
折橋ループ全景拡大する
折橋ループ全景。本郷川のせせらぎに耳を傾け、かつてこの地であったかも知れないドラマを妄想してみる。
折橋ループ空撮拡大する
折橋ループを空から眺める。写真のループ左、カーブ内側の微妙な空間が不思議に思えるが、1997年以前の道路跡だ。
折橋の橋名板。
新折橋の橋名板。新折橋は橋長37m。
伊能大図にも記された折橋。

折橋ループ ビフォー・アフター
Before
After

左:1976(昭和51)年10月12日 国土地理院撮影
右:2013(平成25)年08月09日 国土地理院撮影
交差点北側の山肌が大きく削られたのは1979(昭和54)年の緑資源幹線林道接続に伴うものではなく、1997(平成9)年前後の交差点改良によるもの。