港歩道橋(豊岡市)

豊岡市のほぼ北端、円山川の河口に架かる港大橋に並行する歩道橋の左岸(西端)側斜路がループしている。

1889(明治22)年の町村制施行で「港村」という名の村が成立したが、長らく円山川で「港東(旧 気比村・田結村・畑上村・三原村)」と「港西(旧 小島村・瀬戸村・津居山村)」に分断され、それが村内の対立を招いていた。個人経営による渡船(大正末期から昭和初期頃に県営に移管して無料化)は存在したが村の発展の大きな障壁であった。

幾度もの陳情や請願を経て1954(昭和29)年10月15日に初代の港大橋が竣工、同年11月10日に村道(有料道路)として供用開始、1959(昭和34)年に県道に編入された。

1961(昭和36)年9月の第二室戸台風被害により右岸寄りの一部径間が流失、架け替えることとなって一時的に渡船が復活、1967(昭和42)年7月19日に二代目の港大橋(幅員6m)が竣工した。初代で採用された可動橋(跳開橋)は二代目でも踏襲されたが、昭和50年代には稼動を停止したらしい。

全長328mの橋梁としては幅員6mは狭隘で、朝夕の通学時間帯、とりわけ積雪凍結期や強風時は危険な状態が続いたことから、1995(平成7)年から歩道設置が強く要望された。2004(平成16)年に港歩道橋(港大橋単独歩道橋)着工、2008(平成20)年12月26日に渡り初め式が行われ、歩行者用のみ暫定供用開始、翌2009年11月に自転車用斜路が完成した。港歩道橋の架橋位置は初代港大橋の位置とほぼ一致する。

上述のような経緯のため、港大橋(車道橋)のすぐそばに架設されながら港歩道橋は可動部を持たない。

歩道橋建設に先立って円山川右岸側の絹巻神社の鳥居が移築されたらしいが、鳥居が4基あってどれがどこにあったものか現場で見てもよくわからないというのが正直なところだ。

路線兵庫県道11号香美久美浜線
所在地兵庫県豊岡市小島
回転度270度
完成時期2009(平成21)年11月
実走行日2024-05-03
全景写真
左岸側から眺める港歩道橋の全景拡大する
左岸側から眺める港歩道橋の全景。これではループしている様子がよくわかりませんね。
交差部から眺める港歩道橋斜路拡大する
これでどうだ?交差部から眺める港歩道橋斜路。
港歩道橋は船舶通航に備えた可動部を持たない。
港大橋の跳開機構拡大する
並行する港大橋の跳開機構。江戸時代はここ港村(津居山)と出石や八鹿の間で三十石船で米や材木を輸送したそうだが明治中期には姿を消した。
漁船の船尾に張るスパンカー用のマスト(尾檣)対策で可動橋にしたと想像するが、ぶっちゃけ、跳開の受益船舶が円山川の上流のどこに向かっていたのか、過去の空中写真を見てもよくわからない。
※ 1990(平成2)年に三十石船の豊鴻丸を復元、イベント等で運航されたが、その頃には可動橋は開閉を停止していた。
港歩道橋左岸斜路空撮拡大する
地上からではループしている様子がいま一つわからないので空撮。
港歩道橋左岸斜路俯瞰拡大する
朝、中学生はここを登り、高校生は下って城崎温泉駅へ向かう。
橋歴板で知る段階的施工

参考資料
豊岡市史 下巻 昭和62年3月1日/豊岡市