芦有ドライブウェイは1961(昭和36)年9月21日に開通した、芦屋と有馬温泉を連絡する一般自動車道である。その芦屋寄りの山をループトンネルで一周して標高を上げてゆく。ループの途中には、大阪湾を眺める東六甲展望台が設けられている。
ループトンネルの名は金井トンネル。周辺の字名だと想像していたが外れた。事業者である芦有開発株式会社の社長が金井氏だったのだ。その金井慶二を検索してみるとなかなかの実業家だったことがわかる。
関与したひとつ、有馬温泉・元湯 古泉閣によれば
当時は芦屋から六甲迂回路を通り1時間以上掛かった。有馬をもっと身近な存在にと、「道がなければ道を作れば良い」と芦屋と有馬を繋ぐ、芦有道路を開通。開通式に高松宮宣仁殿下を始めとする名立たる方々にご出席頂いた。
とある。ループトンネルで高級感あるいは日常と非日常の結界を演出する意図があったのかも知れない。ループさせることで大きな標高差を獲得しようとする案は誰が発案したのだろう。当時、まともな先行事例は 七里岩ループ(青坂隧道)(1932年)、観音寺銭形展望台(1954年)、龍山大橋(1955年)、仙人大橋(1959年) ぐらいしかなかった。あるいは海外事例を参考にしたのだろうか。
路線 | 一般自動車道芦有ドライブウェイ |
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所在地 | 兵庫県西宮市越水社家郷山 |
回転度 | 240度 |
完成時期 | 1961(昭和36)年4月 |
実走行日 | 2024-04-28 |
全景写真 | |
金井トンネル北側(芦屋側)坑口。トンネルの長さは175m。トンネル内でおよそ75度回転する。
金井トンネル南側(有馬側)坑口。扁額の揮毫者名は書かれていない。金井社長だろうか?
この銘板を見るまで、社長名を冠したトンネル名とは想像だにしなかった。発注会社・施工会社ともに社長名が標示されるのは一般的ではないものの珍しいわけではない。現代の銘板は担当者名が刻まれる。
拡大する 芦有ドライブウェイのループ全景。トンネルなのでループしている様子がわかりにくいのはやむを得ない。 1962年~1968年、道路をはさんで東六甲展望台の山側にレストハウスが置かれていたそうだ。写真中央、その建物の一部が残存している。当時はレストハウスと展望台を連絡する架道橋が設置されていたそうだが、その痕跡は見つけられなかった。 |