作並温泉ロータリー

「仙台の奥座敷」と言えば秋保温泉か、作並温泉か。

その作並温泉の一角、おそらく別荘地として開発されたエリアに4枝の円形交差点がある。残念ながら回転方向は指示されておらず、ロータリー交差点とは言い難い。改正道交法施行に伴って県内の円形交差点を軒並みラウンドアバウトに指定した宮城県公安委員会も、ここだけは首をかしげたに違いない。私道なので気づかなかったことにしたのかも知れないし、道路管理者が規制に消極的だった可能性もある。

後述のとおり、遅くとも1964(昭和39)年には存在していた円形交差点であり、宮城県内現存最古の円形交差点と言ってよいだろう。

円形交差点の中央島には銅像が置かれている。
根白石村(ねのしろいしむら:現在の仙台市泉区中部)出身で昭和4年から作並温泉郷の開発を行い作並温泉の近代化に貢献した佐藤佐蔵氏を顕彰し、昭和39年3月に建立したと記されている。碑台には事業を主導した大興土地建物の他、錚々たる社名を連ねた銘板が埋め込まれているが、何を機に顕彰したのかはわからない。ただ、連ねた社名から、仙台の中産階級を狙って別荘地を開発したことは容易に想像できる。

一方、作並温泉の歴史を刊行物でたどってみると、1796(寛政8)年に開業した岩松旅館(現在の鷹泉閣 岩松旅館)が明治時代からリーダー的存在で作並温泉を宣伝し、その地位を維持してきたことが窺える。言い換えれば、佐藤佐蔵氏や別荘地に関する情報が一切ないのだ。

別荘地事業はおそらく失敗に終わったのだろう。現在は事業用地と住宅用地が混在した状況になっていて、周辺の管理がどうなっているのか少々怪しい。円形交差点を含む道路の状態が物語っている。

路線私道
所在地宮城県仙台市青葉区作並字元木
完成時期1964(昭和39)年?
実走行日2022-08-27
全景写真
仙台から山形へ向かって国道48号を走り、ニッカ宮城峡蒸溜所や作並駅を過ぎ、湯渡戸橋を渡った直後のここを右折する。
作並温泉ロータリーを西側から眺める拡大する
すると、正面に円形交差点がある。中央島には「佐蔵の像」が置かれている。写真右奥には日帰り温泉の「都の湯」がある。作並温泉で日帰り入浴専業はここだけか?
作並温泉ロータリーを北側から眺める拡大する
作並温泉ロータリーを北側から眺める。この方向に進行する車は滅多にいない。
東側から眺める。取材中に5-6台の通行車両を見たが、いずれも迷うことなく右回りしていた。さすがラウンドアバウト最多の仙台市民。
南側から。この道路は袋小路だ。
銅像の台に刻まれた「佐藤佐蔵翁 顕彰會發起人」
株式會社 振興相互銀行 →現・仙台銀行
株式会社 丸光 →現・さくら野百貨店の源流の一部
日立家庭電器株式会社 →現・日立グローバルライフソリューションズ?
産業電気株式会社 →現・昱機電
阿部建設株式会社 →現存
大興土地建物株式會社 →現存

とまあ、それなりに仙台の有力企業が名を連ねていて、作並温泉の別荘地化を画策していた様子がうかがえる。