高遠原砂防堰堤魚道

信州・上伊那地域南部、中川村と飯島村の境界付近を流れる前沢川に設けられた砂防堰堤付設の魚道がループしている。「たかとおばら」と読む。この付近の小字名だろうか。

概要

長野県 > 社会基盤 > 砂防 > 過去の災害に学ぶページ > 砂防関係のパンフレット長野県の砂防 施工事例の紹介 1-1 (PDF:8116KB) に掲載されているとおり、中央道・JR飯田線・中川村の集落を保全するために整備された砂防堰堤で、とりわけJR飯田線を保全する目的が強調されている。魚道は主にアマゴが対象魚とのこと。

砂防堰堤であるが故に、堰堤上流側の河床は徐々に上昇する。建設直後と満砂状態では魚道口の位置を変えなければならないことを考慮して、満砂状態になったらもう一基ループ魚道を新設する予定だったらしい。

「長野県の砂防 施工事例の紹介」5-6ページ
近年、一般のダムと区別するため、堤高10m以上のものは砂防堰堤と呼ばれるようになっている

木々の成長ぶりから推測して15年以上メンテナンスされていなかった模様で、魚道の堆砂が激しく、砂防堰堤が満砂状態になっていることもあって魚道として機能していない。追加設置が予定されていたもう一基のループ魚道は当然ない。計画が見直されたのか、それとも忘れられたのか。

通常は管理車両をすぐ近くまで乗り入れられるよう道路が整備されているはずだが、見つけられなかった。藪が酷くて探索する気になれなかったこと、余計なことをして時間を無駄に費やすことを避けた。

ループ魚道情報の整理

構造らせん型魚道
水系天竜川水系前沢川
所在地長野県上伊那郡中川村片桐
回転度1170度(3¼回転)
完成時期1999(平成11)年?
訪問日2022-12-03

砂防堰堤までの道のり

事前調査でアプローチ路を見つけられなかったので、第一候補として前沢川右岸の斜面を下ることにした。リンゴや洋梨の果樹園の中を抜けてゆく。果物泥棒が頻発する昨今、怪しまれないために収穫が終わって(+落葉して探索に適している)から積雪・凍結までの短い時期を狙っての現調だ。

想像通り、動物避けのフェンスが設置されているが鍵はかかっていない。ここから斜面を下る。竹が刈り取られており、滑って転んだら串刺しの刑だ。慎重に足を運ぶ。当然、写真を撮る余裕などない。

水平距離20m・標高差15mほどの急斜面を下るとこんな風景が。デリニエーター付きガードレールは意外だ。まあ、道路である以上は夜間走行することもあるだろうけど。

砂防堰堤全景

高遠原砂防堰堤の堤体発見。完成から23年とは思えぬ貫禄だ。残念ながら堤体銘板を見つけられなかった。左岸側に取り付けられているのかな?

天端を歩くとき、「ここで脳溢血になって倒れたらアウトだよなあ」といつも思う。

礫は少なく、砂~シルトが大半のようだ。天端まで土砂が溜まっていて樹木が何本か生えている。満砂状態になって10年近く経っているだろうか。

そんな堤体の下流側にガードレールが続いているので、歩いてみる。

魚道の様子

高遠原砂防堰堤魚道遠景拡大する
歩きだしてすぐ、川のほうに人工物の雰囲気があることに気づく。これが高遠原砂防堰堤の魚道だ。

高遠原砂防堰堤魚道全景拡大する
イバラに悩まされながらルートファインディングしつつ魚道にたどり着く。幅員4mの道路でルートファインディングってどういうこっちゃ。ともかく、高遠原砂防堰堤魚道の全景を眺められるのはこの地点しかない。

高遠原砂防堰堤魚道に接近拡大する
近づいてみる。擬岩加工が施されたタイプで、国内では他に4例ある。→

魚道形式はプールタイプのアイスハーバー型。越流しないU字型の隔壁(静穏域が形成されるため魚が留まりやすい)が特徴だが、覗いてみると…

アイスハーバー型の欠点とも言える堆砂が顕著だ。

魚道内が砂防堰堤状態。この堆砂を除去する人工はどれぐらいだろうか。幹線道路への接続路がないから見積不能かも知れぬ。

この橋で 水路式魚道 から らせん型魚道への切り替え拡大する
この橋で 水路式魚道 から らせん型魚道へ切り替わる。擁壁に用いられた玉石は現地調達か?それともどこかから買ってきたのか?

追加されるはずだった2基目のループ魚道設置予定地を眺める。建設されることはもうないだろう。

おまけ

砂防堰堤近くの斜面にあったビン

透明ビンのカルピスっていつ頃だろう? このビンがここにあるのは、砂防堰堤および魚道建設とはリンクしていないと思う。

前沢川砂防・水害対策の歴史

前沢川は土砂災害との闘いの歴史を持つ。近隣には象徴的な地がいくつかあるので、合わせて訪問してみた。

このループ魚道は @italian_sky さん情報提供いただきました。